難民危機と緊縮財政でギリシャはどうなったか_アイキャッチ

難民危機と緊縮財政でギリシャはどうなったか


通貨ユーロをめぐる国民投票にかかわる騒動も記憶に新しいギリシャですが、債務問題の解決を見ないうちに難民問題という新しい問題を抱えこむことになりました。相次ぐ危機に、ギリシャの現状はどうなっているのでしょうか。今回は、様々な問題が続くギリシャの現状について見てみましょう。

EU加盟国の亀裂を生み出したギリシャ債務危機

そもそもギリシャが緊縮財政をおこなうに至った経緯は、どのようなものだったのでしょうか。緊縮財政に向かう一連の流れを大まかに振りかえって見ましょう。
2009年10月、ギリシャにおいて政権交代がおこなわれ成立したパパンドレウ新政権が旧政権(新民主主義党)の財政赤字の隠蔽が明らかにしました。この暴露によって、ギリシャのGDPの4%程度と発表されていた財政赤字は、実際には13%近もあり、債務残高も国内総生産の113%になることが明らかになりました。翌2010年1月には欧州委員会がギリシャの経済統計の不備をしてきしたことで財政状況の悪化が表面化したことと、楽観的な財政健全化計画が立案・成立したことで格付け会社はギリシャ国債の格付けを引き下げます。
格付け引き下げにより債務不履行(デフォルト)不安が表面化したことでギリシャ国債の取引価格が急落し、株式・為替も大きな影響を受けることとなりました。ギリシャはEUに対して金融支援を求めましたが、支援の是非をめぐって支援国と非支援国での温度差は極めて大きく、特に主要な支援国であるドイツ・フランスは、ギリシャに対して厳しい緊縮財政をおこなうことを極めて強く要求します。
これに対してギリシャは金融支援受け入れの是非を問う国民投票をおこない、かろうじて支援受け入れと緊縮財政の実行がおこなわれることとなりました。これにより事態は一応の沈静化に向かったもののEUの間に深い亀裂を残しただけではなく、ギリシャの実質的な国内総生産は2009年から2012年の間に17%も減少することとなりました。

欧州難民危機と受け入れ国の負担

このように財政危機の只中にあり、余力に乏しいギリシャですが、更に追い打ちをかけるように発生しているのが2015年から急増した欧州への難民流入(欧州難民危機)です。難民危機発生の原因はいくつかありますが、その中でももっとも大きなものとして注目されるのが、2011年に相次いで発生した「ジャスミン革命」や「アラブの春」として知られる中東諸国の民主化要求運動です。これらの運動は国際社会の注目を集めているこそ順調に進んでいたものの、国際社会が関心を失うと同時に政府による弾圧が激しくなり、特に運動の激しかったチュニジアやシリアでは熾烈な内戦の引き金となり、シリア難民が発生する大きな原因となりました。
シリア難民の一時受け入れ先となっているのがギリシャやスペインに代表される南欧諸国です。特にアフリカに近いギリシャでは、2015年7月の段階で渡ってくる難民や越境者は2014年に比べて1.5倍増しとなり、トルコに近いレスボス島では、トルコからの越境者の数の増加が顕著です。このように難民流入が顕著に増加しているギリシャですが、債務危機による緊縮財政によりギリシャ経済に余裕がない現状では、政府が大多数の難民を救助するだけの財政余力がなく、大きな問題となっています。財政面の問題はもちろん、文化的・社会的差異から発生する様々なあつれきが問題になるなど、ギリシャにかぎらずヨーロッパ全域で難民の急増にともなう様々な問題が表面化しています。

おわりに

難民危機を受けて日本でも受け入れが議論され、これまでの事実上の受け入れ拒否の体制から転換しつつありますが、ギリシャの例を見るかぎり無計画に受け入れるのはあまり賢明とは言えそうにありません。難民受け入れによる問題の発生を防ぐためには、ギリシャの先例を参考にした慎重な議論が必要となるでしょう。

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