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中国が抱える地政学的リスク


アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となった中国ですが、その急速な経済発展はいびつな社会構造を生み出し、国際社会に対する大きなリスクとなっています。一般に「チャイナリスク」中国特有のリスクや中国の抱える地政学的リスクには、どのようなものがあるのでしょうか。今回は中国の抱えるチャイナリスクと、地政学的リスクについて見てみましょう。

中国特有のリスク「チャイナリスク」と中国の地政学的リスク

鄧小平(とう・しょうへい)の指導体制の下で開始された中国国内体制の改革および対外開放政策である「改革開放」により、漸次的に共産主義の経済制度を資本主義化・市場化していく過程で、西欧・日本から多くの企業が中国へと進出しました。しかし、中国に進出したこれらの企業は、共産主義のもとで形成されていた独特な経済制度や既得権益と各所で衝突し、中国への進出と企業経営では、西洋と東洋という文化の差を超えて、中国独特の経営慣行への対応が求められることとなりました。
日本や欧米などの先進国では普通選挙に基づく民主主義が政治体制として採用され、仮にも法による支配の下で基本的人権が保障されていますが、中国では中国共産党による事実上の一党独裁が維持されています。
この状況を打開して中国の民主化を目指した1989年の六四天安門事件も、人民解放軍の投入・鎮圧によって阻止され、現在でも人民解放軍の一部を暴徒鎮圧向けに改編した治安維持部隊である「中国人民武装警察部隊(武装警察)」による強権的な治安維持や、「金盾」として知られるインターネット検閲システムをはじめ、中国共産党による一党独裁体制を維持するために多大な労力を投入しています。
このような中国独特の政治体制から生じる政治・商取引上の様々なリスクを総称して「チャイナリスク」と言います。特に日本の著名人や日本企業に対して多いと言われるチャイナリスクの代表的なものとして、

  • 政治リスク
  • 経済リスク
  • 社会リスク
  • 対日抗議行動
  • 治安悪化
  • 新興感染症
  • 従業員の安全管理
  • 情報セキュリティー
  • 企業の社会的責任(CSR)

などが知られています。

このように広範囲に渡って影響があるチャイナリスクですが、その対象はあくまでも個人や団体、企業などの限られた領域にとどまります。しかし近年の急激な経済発展は、チャイナリスクとは別に大きな地政学的リスクを生みだすこととなりました。そのもっとも代表的なものが、中国による海洋進出の象徴とも言える「第一・第二列島線」と、複雑化する一方の南シナ海をめぐる「九段線」の存在です。

太平洋の「第一・第二列島線」と南シナ海の「九段線」

日本に直接関わりのある中国の地政学的リスクとしては、太平洋への進出を企図する「第一・第二列島線」と、通商路に影響する南シナ海の「九段線」の存在です。第一・第二列島線は、中国の軍事戦略上の概念のことであり、戦力展開の目標ラインと対米防衛線を兼ねるものであり、短期的には仮想敵国であるアメリカに対する国防計画、長期的には中国が世界に同盟国を持つ覇権国家に成長するための海軍建設長期計画です。第一列島線は九州を起点として、沖縄 – 台湾 – フィリピン – ボルネオ島を結ぶラインであり、第二列島線は伊豆諸島を起点として、小笠原諸島 – グアム・サイパン – パプアニューギニアに至るラインとされています。このように太平洋方面に張り出している第一・第二列島線に対して、その形から「(中国の)赤い舌」とも呼ばれる「九段線」とは、中国と東南アジア諸国の間で発生している南シナ海の領有権問題に関して、1953年から現在まで中国がその全域にわたる権利を主張するために地図上に引いている破線のことを指します。九段線は断続する9つの線の連なりにより示され、中華民国(現在の台湾)が同様の目的に基づいて1947年に設定した「十一段線」を、1953年に新たに書きなおしたものとして知られています。
九段線は時計回りに、

  • バシー海峡
  • 北ルソン島トラフ
  • マニラ海溝
  • 南沙群島とフィリピンの間
  • パラワントラフ
  • 南沙群島とマレーシアの間
  • 南沙群島とインドネシア・ナトゥナ諸島の間
  • 南沙群島とベトナムの間
  • 西沙群島とベトナムの間

を通る形で設定され、島しょの領有権や歴史的な権利、国境線を確保するために設定されています。

第一・第二列島線と九段線の設定による周辺国との摩擦

このように中国がアメリカと伍する覇権国家となるために設定された第一・第二列島線と九段線ですが、その設定は日本や東南アジア諸国などの周辺国の主権が及ぶ範囲にかかるものであり、各国の反発と激烈な対応を招いています。特に中国の積極的な海洋進出にとって実に邪魔な地理的配置をしている日本との軋轢は激しく、尖閣諸島の領有権問題をきっかけとする中国による日常的な領海侵犯や沖ノ鳥島の扱いをめぐる国際法廷での闘争など、法解釈をめぐる争いから実際の小競り合いまで、大小様々な問題が発生しています。

おわりに

このように、中国の政治体制と積極的な国外進出の方針に対して、日本を含む周辺諸国は神経を尖らせています。今後もこの方針は激化することはあっても落ちつくことはないと思われ、その動向にはより一層の注視が必要と言えそうです。

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地政学的リスクと経済

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